たまごビル健康講座                       平成23年6月18日


糖尿病の救急医療       関西医科大学教授 中谷 壽男 先生
 

 2011年3月11日に発生した東日本大震災に対し、関西医大災害医療派遣DMATの活躍が紹介されました。救援先は岩手県釜石市です。
 
さて、そこから糖尿病の話になりました。災害時には、電気なら融通しあえます。しかし、動物の細胞では 自前でエネルギーを作るため、融通出来ません。細胞の燃料は糖質(ブドウ糖)、脂質 蛋白質などになります。細胞は、ブドウ糖を酸素を使って巧く燃やし、エネルギーを作ります。ブドウ糖は血液に入って全身に運ばれ、インスリンの助けを借りて細胞の中に入り、燃料となります。


 インスリンは膵臓から分泌されるホルモンで、血液中の糖分を細胞の中へ押し込む働きがあります。その結果、糖分が細胞に取り込まれ、エネルギーとなるため消費され血糖値が下がります。
ここで、インスリンの働きが足りないと、細胞に糖質が取り込まれず、エネルギーを作れないため消費されず血糖値が上がり、高血糖になります。糖質のみならず、脂質の代謝にも障害が出ます。


【糖尿病の種類】
   ★2型糖尿病 インスリンの働きが悪い、細胞がインスリンに鈍感、インスリンの出方が減る、食べ過ぎ、運動不足 など
             (日本では95%が2型糖尿病です。)

   ★1型糖尿病 インスリンを作る細胞がこわれる 小児から起きる

   ★そのほか  手術で膵臓を切除 など



 糖尿病の患者数は、糖尿病の疑いが強い人が約1000万人(平成19年厚生労働省国民健康・栄養調査)
そのうち4割は治療をうけたことがないという驚きべき事です。
 
糖尿病の予防方法は、食事・運動と言われます。生活習慣を改めメタボ を防ぐ事が大切です。もし、糖尿病を放っておくと 糖尿病発症時から10〜15年で三大合併症、糖尿病神経障害、糖尿病網膜症、糖尿病腎症の症状が出てきます。

【三大合併症】
  ★糖尿病神経障害
    合併症の中で最も早く出てくる
    足や手の末梢神経障害、しびれ、筋力の低下、胃腸の不調、
    立ちくらみ、発汗異常、インポテンツ など。

  ★糖尿病網膜症
    網膜の血管が悪くなり、視力が弱まり、中には失明。

  ★糖尿病腎症
   腎臓の毛細血管が悪くなり、尿が作れなくなる。 
   人工透析の原因の1位。

 糖尿病は、症状が出るまで長時間かかるため、油断しがちですが、症状が出たら手遅れですので、糖尿病の検査を受け、しっかり予防することが大切です。


【合併症に対する緊急医療】
      脳卒中、心筋梗塞、脱疽

【救急救命士の処置拡大】
近い将来(一部地域で試験中)意識障害患者で低血糖発作が疑われる場合、血糖値を簡易検査にて
測定し、低血糖の場合→ブドウ糖の静脈注射で治療できるようになる。