たまごビル健康講座                       平成24年2月25日

                                  
   今後のあるべき医療

             東京大学名誉教授  日本統合医療学会理事長
                   渥美 和彦 先生

 
 渥美 和彦 先生は東京大学医学部を卒業し、東大木本外科で心臓外科医として活躍されました。しかし、子供の先天性心臓病を担当していた為、助かる人より死ぬ人が多い状態でした。

“心臓が止まらなければ死なない”との考えから、心臓移植、人工心臓と進まれ、東大医用電子研究施設で最先端の医工学の研究をされました。



 

 その後、日本学術会議会員として、第7部長を務め、日本の医学の将来のありかたを考えました。そこで会議を進め研究した結果、医学や科学を進歩させるだけでは、患者は良くならない事、本当に患者の為にはならない事に気付きました。そこで現在、日本統合医療学会理事長として、今後の医療の在り方を研究されています。



 統合医療とはなんでしょうか。統合医療とは東西文明を結び付ける医学です。素晴らしい進歩を遂げてきた西洋文明ですが、その進む方向や思想が不安定になってきています。
西洋医学も、科学と結び付き、科学的な分析力や思考方法を得たため、大きく飛躍しました。しかし、現在の西洋医学は、医学分野の細分化、専門化により、病気を診る事は出来ても、人間本体を診る事が出来なくなっています。
 伝統医学(中国やインドなど)は、科学的ではないのですが、多くの人体を診てきた経験により、実際に治療してきた莫大な実績があります。これらの医学は、独自の発展をして来たと言えます。しかし、どちらも限界に来ています。現在、東西の文明(キリスト、イスラム等)が不安定になっています。今後、東西文明や東西医学の融合により、新たに生まれる医療が統合医療と言えます。



 
○統合医療の定義
   ・患者中心の医療
   ・身体・精神(心理)、社会(環境)、霊性(魂)を含めた全体医療
   ・治療のみならず、疾病予防、健康維持、長寿の医療(抗加齢)
   ・生まれて、死ぬまでの包括医療(生病老死)


 
   現在の医療は、医者・薬屋中心の医療となっており、“いかに治すか”という考え方の医療になっています。しかし、その治療が、本当に患者の為になるのかを考える事が必要です。患者中心の医療になるべきである。患者中心の医療とは、病気にならないように予防し、健康を維持し、長寿に導く医療と言えます。その為には、身体だけではなく、心や環境の事も大切になります。 渥美先生は、身体全体を見て、“健康体”と言う考え方から病気の事を考えて行く“たまごビル”の方針に、大いに興味を示され、研究したいとされています。