たまごビル健康講座                       平成24年6月9日

                                  
   救急医からみたあるべき医療 <          第40回日本救急医学会総会会長 関西医科大学救急医学講座
                     
                            第40回日本救急医学会総会会長 
                        関西医科大学救急医学講座
                        付属滝井病院救命救急センター長
                                      中谷 壽男 教授    
                  
                    

中谷教授は、来る11月13日から行われる第40回日本救急医学会総会・学術集会の会長を務められます。この多忙な先生に、たまごビル健康講座のため来ていただきました。

 大学の教授を務められている先生でも救急医として月12回の当直、休日に日直、週110時間を超す勤務を、何とか80時間に減らそうとされている状態です(会社員は週40時間程度)。救急医は本当に大変です。

 先生の講座の前に、テレビで放映された“もう病院では死ねない”という医療の現状が紹介されました。医療制度の変更により、治療効果が期待できない患者を退院させなければならないのです。独り暮らしの身体の不自由な老人が退院させられると、生活できない現状が有ります。しかし、それでも退院させなければならない医療現場の苦悩が紹介されました。

【救急医療の問題点】

○病院と地域の医療の連携
 救急医からみて問題としなければならない点は、救急医の過酷な勤務状態にあります。自宅で病気になった場合でも直ぐに救急車となる現状があります。本来は、先ず町のかかりつけのお医者さんに連絡し、治療をしてもらうべきです。昔は、医療鞄を持ち、看護師さんをつれて往診されるお医者さんが多数いました。

 病院と地域の医師が連携する事で、かかりつけのお医者さんが診断し、本当に必要な時だけ救急医療が使われるようにしないと、救急医療の現状がよくなりません。

○医師の専門医化
 専門医の方が総合医より偉く見える事で、何でも、専門の医師の治療を望む患者が多くいます。もちろん、重大な場合は専門医の出番となるのですが、現在、専門以外の事は何も分からない極端な専門医が増えています。夜間緊急の場合でも、専門以外は診られない医師。また、患者が専門医を指定するため、搬送が大幅に遅れてしまう現状が有ります。

 初期研修の基本理念に、“全ての医師は総合医であるべき”とあります。夜間の救急医療は、命に別条がなければ応急処置をし、翌日に専門の医師が治療と言う事を徹底すべきです。本当に必要な患者が、すぐ救急医療を受けられるように、するべきです。


【地域医療の問題点 兵庫県立柏原病院小児科で発生した問題】

 2007年に新聞で紹介された日本の地域医療が抱える問題です。丹波市内で唯一、小児の入院を扱う病院で、医師不足から閉鎖の危機が発生しました。医師2名で治療に当たっていましたが、1名が抜ける事で、残る一人が「負担に耐えられない」と退職の意向を表明しました。医師の過酷な勤務状態が明らかになりました。

 そこで、現状を知った母親たちが「県立柏原病院の小児科を守る会」を結成し立ち上がりました。お医者さんの過酷な勤務実態を知り、自分たちが出来る事で、解決しようとしたのです。人任せにせず、自分たち自身が行動し、医師が働きやすい地域を作るしかないと気付きました。

○三つのスローガン
(1)コンビニ受診を控えよう
(2)かかりつけ医を持とう
(3)お医者さんに感謝の気持ちを伝えよう

 現在の日本が抱える医療の問題でもあります。コンビニ受診とは、夜でも昼間と同じ安易さでコンビニを利用するように受診する事です。早めに昼に行けるのに自分の都合で夜間診療に行く。夜でも昼と同じ検査や治療を望む。すいているから夜行く。救急車で行くと先に診てもらえるから救急車を呼ぶ。これらの事が、医師に過酷な負担を与える事になります。
 また、本当に必要な人が必要な時に必要な医療を受けられるように、また、病院の勤務医の負担を減らすためにも、症状に応じて病院と診療所(かかりつけ医)を使い分けること。
医療が進歩した今、治って当たり前という思い込みや、いつでも診てもらって当たり前という気持ちが有ります。医師に感謝の気持ちを持ち、きちんと伝えましょう。


【救急医療について】

 厚生労働省は長らく救急医を資格として認めませんでした。それは、「全ての医師は救急医であるべき」とい方針のためです。

 医師は自分の専門分野に進むと、専門以外の事が、分からなくなります。しかし、専門分野以外では役に立たない医師は、救急時や、災害時には役に立たない医師となります。若い時は、総合医の知識を充分会得すべきです。専門性を高めるには、山で例えると高い山には広いすそ野が必要です。若い医師が基礎を学び、専門性に偏らず総合医として活躍し、患者さんも専門医重視の考え方が変わってくれば、救急医療も改善されていくと期待されます。

    

【中谷先生と石垣院長の対談】

 医療の改善や、救急医療を活かすためには、日頃の生活が大切です。病気の予防をする事で、夜に救急病院に行く事を減らし、救急医の負担を減らしましょう。たまごビルでは、ROB治療(内臓調整)で病気にならない身体作りをしています。
また、何でも専門医に、夜でも病院に、と言う事を無くす事が大切です。入院が必要のない患者さんは地域のかかりつけのお医者さんへ行き、入院の必要な患者さんは病院へ行くという、使い分けが大切です。