たまごビル健康講座                       平成24年9月8日

                                  
     東海・東南海大震災に備えて
             
     
   関西医科大学 物理学科名誉教授     立命館大学SRセンター顧問
          名古屋大学客員教授   立命館大学理工学部講師(非常勤)

                   
                 木原 裕 先生


挨拶 石垣 院長】

「稲むらの火」の話が紹介されました。江戸時代末期、安政南海地震が起こりました。紀伊国広村(現在の和歌山県広川町)で、津波に気付いた濱ロ梧陵が津波を知らせるため、自分の田の大切な「稲むら」に火を放ち、高台に誘導し、多くの人々を避難させて津波の被害を防いだ逸話です。関西では100年に一度は必ず地震や津波がやってきます。しかし、最近起こった阪神大震災も半ば忘れられ他人ごとになっています。

福島県立医科大学理事長兼学長 菊地臣一先生(腰痛学会の権威者)は、現在も東日本大震災の低放射能汚染対策に頑張っておられます。たまごビルもチャリティたまごビルで東日本大震災の募金をし、去年も餅つき大会で作ったお餅を1000個送り感謝されました。今年も送ります。

今度は私たちにとって東海南海地震について、どういうものか、日々にどう対処すればよいか、物理学の専門家である木原先生にお話ししていただきます。

 東海・東南海大震災に備えて   
     
            木原 裕 先生

       関西医科大学 物理学科名誉教授 立命館大学SRセンター顧問
       名古屋大学客員教       立命館大学理工学部講師(非常勤)    

 木原先生より、確率の考え方を分かるためのお話がありました。
例えば、交通事故で1年に5,000人が亡くなっています。日本の人口を1億人とすると20,000分の1になります。人生を50年とすると400人に1人が交通事故で亡くなっている事になります。この事実から、交通事故にあわないために、「外へ行かない、車に乗らない」ようにするでしょうか。しかし、車の利便性を考えると、楽しいことと事故にあう確率を考え、事故にあうリスクはありますが、車を利用するのではありませんか。
また、飛行機では、もし落ちたら全員死にます。しかし、車の事故より確率が低いので、利用するのでは、ありませんか。私たちは、リスクを確率で考えて行動しているのです。
地震でも、どのくらいの確率で、どうゆうことが起こるか、考えていきます。

 
地震には、プレートの移動による地震と断層が動く事による地震があります。

 (1)プレート間の移動で起こる地震。
   地殻とマントルの間にプレートがあります。マントルは流動性があるため、プレートは動きます。
   2つ以上のプレート間で働く力で地震が起こります。

 (2)断層が動く事による地震。
   地震によってできた岩盤の亀裂が移動することで起こる地震です。活断層とは、最近まで
   地殻運動を起こした断層で、将来地殻運動を起こす可能性があるものです。

しかし活断層がある所で地震が起こる可能性は50%、活断層が無いと言われているところでも50%と、地震が起こる確率は同じです。

 マグネチュードと震度

プレート間の移動で起こる地震はエネルギーが大きいため、M7以上の大きい地震が起こります。
断層が動く事による地震は、エネルギーが小さく、地震の規模もM6程度と小さい。
東南海地震はプレート型で、M8ぐらいが予想されます。
兵庫県阪神淡路は大きな被害が出ましたが、M7と比較的小さい地震でした。しかし地震が六甲山脈で跳ね返り、戻った地震と地震が共鳴して大きな被害が出ました。共鳴部分だけ大きな被害が出た地震でした。
 過去の大震災
 関東大震災  M8   
 東南海地震  M8  
 南海地震  M8  
 阪神淡路大震災  M7  六甲山による共鳴で被害が大きくなった 
 東日本大震災  M9  被害大 プレートの大きい移動が起こっ   

   
                              AB 南海 CD 東南海 E 東海
 日本は、フィリピン海プレートとユーラシア大陸プレートの間に有るため多くの地震が起こっています。日本の南側にある南海トラフもプレートの境界のため地震が起こっています。南海トラフの地震は周期性で、100年から200年といわれています。
過去には、東南海地震と南海地震が同時に発生、32時間後に発生、数か月後に発生などの例があります。現在では、30年以内に発生する地震の確率は南海地震60%、東南海地震70%といわれています。
 マグニチュードと震度

震度  周囲の様子と被害 
 0(無感)    地震計(震度計)が検知し、人は揺れを感じない。
 (微震)  静止している人や特に注意している人だけに感じられる。
 (軽震)  人に感じられ、障子などがわずかに動く。
 (弱震)   家が揺れ、戸・障子などが音を立てる。
 (中震)  家が激しく揺れ、8分目くらいまで入れた水が容器からあふれ出る。
 (強震)  壁が割れ、煙突が壊れたりする。
 (烈震)  家が倒れる割合が30%以下で、崖崩れ、地割れが起こる。
 (激震)

家屋の30%以上が倒れ、山崩れや地割れができる。 


世界の年間平均地震発生回数
 マグニチュード  

8.0~    

7.0
7.9   

6.06.9   

5.05.9

4.04.9 

3.03.9

2.02.9 
回数     

1

17


134

1,319

13,000

130,000

1,300,000


注1 

注2

注2


注2

注3

注3

注3
 

USGSの資料による。

 注1  1900年以降の平均
 注
2  1990年以降の平均 
 注
3  推定

  東南海地震はプレート型で、M8ぐらいが予想されます。表:「世界の年間平均地震発生回数」から見ると、最大クラスの地震M8以上は、発生比率は少ない事がわかります。ほとんど起こらないけれども、もし最大クラスの地震が起こった時のことを考えて対策することが大切です。
大きな地震が起こるかもしれない。しかし、小さい地震かも知れないのです。地震が起こったらとにかく逃げる事が大切です。小さい地震なら、助かります。新聞で報じられている地震の被害予測は最大の地震の場合です。実際は確率は低いのです。
ここで大切な事は「正しく恐れる」ことです。出来ることはやるという事です。








参加者からの質問

 質問:直下型地震について。断層の上に住んでいる方からの質問です。
 解説:阪神淡路大震災の時、断層のすぐ近くの住宅が壊れていない例もあります。
    現在の耐震設計では被害が少ないのではないか。
    阪神淡路大震災での火災を含め、対策されているので、余り心配する必要はありません。

 質問:備蓄はどのようにしたらよいか。
 解説:水、食料など地震直後の混乱時を乗り切る量が必要で、1週間ほど考える。
     非常用品などは役立ちます。

 質問:地域として出来ることはありますか。
 解説:元八尾市長の西辻先生が来られていました。地域としては、停電・断水などの対策、
     避難計画などをしっかりする事が大切。一人一人に、どうしたら良いか、絶えず指示を
     出すことが大切です。