一般財団法人石垣ROB療法研究所設立祝賀記念講演 
             
  演題  これからの医療  統合医療について
  
     講師  東京大学名誉教授、
          一般社団法人日本統合医療学会名誉理事長
          一般財団法人石垣ROB療法研究所設立発起人代表

        渥美 和彦 先生

(渥美和彦先生は人工心臓のパイオニアであり、アメリカでも数多くの講演をされ、渥美教室からは多くの教授を輩出され、東大、京大、阪大などで活躍されています。)

 石垣ROB療法研究所発足おめでとうございます。
ここには石垣先生にお世話になった方が大勢おられます。私もお世話になっていまして、健康体に近い状態になりました。そのようなことから、今日は統合医療の話をしようということで喜んで駆けつけました。統合医療の話をし、石垣ROB療法がどのように発展していただきたいか話ししたいと思います。



○ 私を統合医療にいざなった三人の賢者

 私は大阪の森ノ宮で生まれました。北野中学(北野高校)、第三高等学校(京都大学)から東京へ行きました。私はいろいろな人から影響を受けて統合医療をするようになりました。
 大阪の北野中学では、同じクラスに手塚治虫さんがいました。有名な漫画”鉄腕アトム”では人間と機械の交流・共存というアイデアでした。”火の鳥”では、生命とは何か。”ブラックジャック”では生命の尊厳をあらわしました。それらの物語から、”人間とは何か”を問い詰めました。哲学をもって漫画を描かれたのは、世界でも珍しい天才であったと思います。手塚治虫さんは、戦争反対、生命の尊厳、科学技術に対する疑問も持っていました。こんなに科学が進んで人間は幸福になるのかと考え、そして地球環境の保護を考えていました。

 第三高等学校では小松左京さんから影響をうけました。ラグビーを一緒にした仲間です。文明史的、未来志向でした。普通の人は30年50年先を考えるが、彼は1000年先に人間はどうなっているか、西暦3000年の未来を議論するスケールの大きい人でした。科学が進歩して人間と芸術と宇宙と自然が一体化すると考えていました。

 もう一人は石井 威望(たけもち)さん。大阪の高津中学を出られ、医学部を卒業して工学部の教授をするという優秀な人でした。石井 威望さんはシステム工学を行っていて、私の人工臓器、レーザー、特に人工心臓に影響を与えていただきました。これらの人々に知識を与えられ、いろいろな考えを持つようになったのです。
 手塚治虫さんから生命について、小松左京さんからは幅広い歴史、石井威望さんから近代的な科学の影響を受け、この3つの要素が私を育て、統合医療という方向に持って来たと思います。



○ 統合医療とは

統合医療は、鍼やマッサージ、健康食品だけと思われがちですが、近代医学と、伝統医学を一緒にして、人間中心の医学をすることです。
 石垣先生は最先端のことをいろいろと考えられて、また東洋医学なども修められています。石垣先生はどういう背景でこういう境地に立たれたのか、不思議に思っています。なぜこういう大変な人がでてきたか経過を知りたいと思っています。私は研究所を作って広めたら良いと言った発起人の一人です。

 今は不安定で不確実で不透明な時代です。東と西の文明が衝突して、新しい文明になろうとしています。新しい文明が生まれるときにはいろいろと価値観が変わります。今まではキリスト教的、科学的な考え方でずっと来たわけですが、これだけでは、だめではないかということに気が付いて東の文明と融合しようとしています。
東洋医学などと西洋医学が一緒になっていくのが統合医療です。石垣ROB療法はこういう両方の良いところを兼ね備えています。
 
 

 いま世界の資源が無くなってきています。医学は進歩して遺伝子科学、再生医学など大きな流れがありますが、資源がなくなって、やりたくてもできない時代が来るのではないかと思います。東日本大震災の時、ライフラインが断たれると、西洋医学は役に立たないことがわかりました。エネルギーを使わない医療=エコ医療が必要になってきます。石垣ROB療法は大きな機械を使わない医療で、機械不要のエコ医療であり、これからの医療になってくるのではないかと思っています。

 近代医学は科学的で分かりやすいことから、非常に広まりましたが、残念ながら個人個人の医療に対しては充分ではありませんでした。伝統医学は個人個人に対応してやっています。治療の本当の基準は治るか治らないかです。患者にとっては治ればいいのです。東洋医学でも西洋医学でも、どの様な方法であっても病気が治れば良いわけです。そういう、いろいろな療法を総合的に判断し、患者に最も良い療法をどう選ぶかが難しい判断になります。

 石垣ROB療法研究所ができてROB療法を研究して行く上で、今までとは違った形で医療に大きな影響を与えていくだろうと思っています。
 石垣ROB療法では、「健康体」というものがあると定義しています。その「健康体」とは、40億年の歴史をもつ人体がスムーズに働く状態であると、明確に定義しています。西洋医学ではどういう状態が「健康体」なのか、具体的に考えていません。わからないのです。石垣ROB療法では、「健康体の特徴」が変化して病気になってゆくとしています。そのため、病気になってゆく過程がよくわかるようです。どうして患者の状態が簡単にわかるのか不思議なところでしたが、説明を受けると、なるほどなと納得できます。研究所では、ぜひこのようなことをさらにみなさんが良く分かるように研究して欲しいと思っています。

 ○パラダイムシフトとは

 パラダイムとは、考える上での重要な“手本”となること。今このパラダイム(手本)を変えるパラダイムシフトが必要になっています。西洋医学しかないという考え方を変えなければならない。これは、ルールを変えるようなもので、大変なことです。しかし、時代の要請ですし、だれかがしなければならないことです。
 


○ 病気の予防について

 現在ある医学(現代西洋医学・東洋医学・その他代替医療)が結果としての病気を中心に診ています。しかし、石垣ROB療法では、結果としての病気だけを診るのではなく、その対極にある「健康体」を中心に診てゆきます。病気の予防をどうするかと考えるとき、病気を中心に診る医療では、病気の予防はできません。病気にいたる原因と経過を診ることが大事だと石垣先生はおっしゃるのです。川下の結果としての病気だけを診るのではなく、川上の原因と川中の経過を診て予防する、という考えです。この考えは、医学4000年の歴史上なかったことです。そのため、適確な予防と治療ができるのでしょう。

しかし、石垣先生だけが治療しているのでは広がらない。これからは石垣ROB療法研究所ができたのですから、そこで沢山の人材を育てて教育し、広めてほしい。医師の手だけで治すだけでなく、最後には患者さんを集め、自分で治す方法を教えていくような研究をしてほしいと思います。


 
 ○ 石垣ROB療法研究所設立をうながした理由

私がなぜ、この研究所を作ることを強く望んだかと言いますと、それは、私は西洋医学を学んで、東大で教えて、その後世界のいろんな所を見てきましたが、石垣ROB療法のようなものは世界にもないのです。この石垣ROB療法を世界に広め、人類の健康と福祉に貢献するためには、研究をさらに深めて、同時に多くの人材を育てることを希望するからです。

○通底する対話



講演を終えた渥美和彦先生が「石垣先生、何か、私の言ったことで間違いはありませんか」とジョークを投げかけました。
それに対して、石垣ROB療法研究所理事長は、

私たちは40億年培ってできた体の「しくみ」を持っています。この「しくみ」を生かすことが大切です。その「しくみ」を生かすために、いろいろな医学の長所を生かすということです。医学の役割は体の「しくみ」をいかに生かすようにするかということです。そして予防することです。
今までの3000年と言われる医学の歴史の中で「健康体」の概念がありませんでした。また、体の「しくみ」を生かすようにするために、健康な体の状態はどんな特徴があるのかという考察がありませんでした。「健康体の特徴」の概念がなかったのです。「健康体の特徴」を知り、「健康体の特徴」の一つである「上腹部の柔軟性」を維持するように生活し治療すれば、病気の予防ができます。すでに病の人に対してはROB治療で「上腹部の柔軟性」をつくれば、「自然の治癒力」がはたらき病気はよくなります。「健康体」を各々の医学が研究すれば、患者さんに最上の治療を選ぶことができ、自ずと統合医療になっていきます。これこそが、渥美先生がご指摘された、セルフケアであり、予防であり、エコ医療であると思います。

石垣ROB療法研究所理事長の説明に対し、設立発起人代表で東大名誉教授の 渥美和彦 先生は、

石垣先生は簡単に説明しているが、西洋医学からでは、なぜ、こういう概念ができたのか、なぞです。なぜ、どういう具合にここまで到達できたのかなぞです。ふしぎです。その境地にいたった過程を私はぜひ知りたい。
おそらく大変な勉強をされたと思うが、どうもそれだけではないように思います。私もぜひROB療法を勉強してゆきたいと思っています。
研究所ができたのですから、さらに研究して、西洋医学の医師にも、患者さんにも、よく分かるようにして欲しい。そして、石垣ROB療法を広めていただきたい。そのためには人材を多く養成し、広めてほしい。